ドイツニュースダイジェスト第965号掲載の記事です。
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社会の少子高齢化が進むことによって生じる問題は、年金のことばかりではありません。近年、介護を必要とする人とその費用が年々増えていることが社会問題となっています。
法定介護保険は、ドイツでは1995年から、日本では2000年から開始され、現在被雇用者の自己負担分の介護保険料は額面給与の1.025%(2013年)となっています。
法定介護保険でカバーされるのは、必要な費用の約半分で、後の半分は自己負担となります。
フルの介護が必要になると、毎月3000ユーロ以上掛かりますが、1500ユーロ以上を自己負担しなければならないわけです。
自分の年金で支払うことができなければ、子どもがいる場合にはその子どもに支払い義務が生じてしまいます。
また、平均寿命の長い女性の方が、介護が必要になる割合が男性より高く、半数以上の高齢者の女性が平均4年以上、何らかの介護を受けています。
というような状況ですので、このままでは国も個人も介護負担が大きくなっていくばかりです。
そこで今年から、介護保険にも助成金が出るようになりました。提案者であるバール保健相の名前をとって、「バール介護(Pflege Bahr)」と呼ばれています。
保険料は、50歳までの場合、毎月約15ユーロ。うち5ユーロは国が負担するので、自己負担分は約10ユーロとなります。
補償額は加入時の年齢によって変動し、30歳で加入する場合は毎月約1500ユーロまで、50歳からの加入の場合は毎月約600ユーロまでとなります。
フル介護で3000ユーロが必要な場合は、そこから法定介護保険で支払われる1500ユーロとバール介護の補償額を差し引いた分が自己負担額となります。
バール介護の補償対象はドイツ国内に限られるため、将来日本に帰国される予定の方には適していません。
しかし、プライベートの介護保険なら、老後、ドイツ国外に移住し、他国で介護を受けることになっても補償対象となります。
また、バール介護の保険料は掛け捨てですが、プライベート保険の場合は保険を使わずに解約すれば、保険料全額の払い戻しも可能です。介護保険選択の際には、国外での介護や認知症なども補償対象となっているかを確認するとよいでしょう。
介護が必要になるのは老後のみとは限りませんが、プライベート介護保険で老後のみを補償対象としたい場合は介護保険オプション(Pflegeoption)があります。例えば、60才で介護保険に加入しようとしても、その時点での既往症や持病によっては追加料金を払うか、加入さえできないこともありますが、介護オプションで毎月数ユーロを払えば、現在の健康状態で将来の介護保険の本加入を予約することができます。
現代社会を生きていくには多くのリスクが伴いますが、きちんと計画を立てることで回避できるリスクに対しては、備えておけば安心です。
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